ドラッグストアで働いていた頃、私が得意としていた仕事の一つが「商品の魅力を分かりやすく伝えること」でした。
店舗には毎月のように新商品が入ってきます。
商品名、特徴、価格、既存商品との違い。覚える情報はたくさんありますが、商品説明をそのまま暗記しただけでは、お客様にも、一緒に働くスタッフにもなかなか伝わりません。
そこで私が意識していたのが、次の流れです。
- 自分で商品を勉強する
- 自分で売ってみる
- お客様の反応を見る
- 分かりやすい言葉に変えてスタッフへ伝える
スタッフからも、「こう伝えたら、お客様が興味を持ってくれました」「この説明の方が分かりやすそうでした」といった話を聞く。そんな何気ない会話を繰り返していました。
振り返ってみると、こうした小さな会話の積み重ねが、商品の販売だけでなく、スタッフとの信頼関係や店舗運営にもつながっていたように思います。
今回は、ドラッグストア店長時代に大切にしていたことを、5つの行動に整理して紹介します。
1. 新商品は、まず自分が理解する
新商品が入ってきたとき、まず大切にしていたのは、自分自身が商品を理解することです。
- どんな商品なのか
- どんな人に向いているのか
- 今までの商品と何が違うのか
- 価格にはどんな理由があるのか
まずは自分で情報を確認します。
ただし、その内容をそのままお客様に説明するわけではありません。商品について詳しくなればなるほど、つい多くの情報を伝えたくなります。
しかし、お客様が知りたいのは商品説明のすべてではなく、「自分にとって何がいいのか」ということです。
そこで私は、商品の特徴をできるだけ覚えやすく、伝わりやすい言葉に置き換えることを意識していました。
2. 自分で売り、お客様の反応を見る
商品を勉強したら、次は実際に自分でお客様へ紹介します。
ここで初めて分かることがあります。
- この言葉には反応してもらえた
- ここを説明すると質問が増えた
- この話はあまり響かなかった
机の上で考えた商品説明と、実際のお客様との会話は同じではありません。
だからこそ、自分で売場に立ち、自分の言葉で伝えてみることを大切にしていました。
そして反応が良かった説明があれば、そのままにせずスタッフにも共有します。
「今日、この説明をしたら反応が良かったですよ」
大げさな研修ではありません。ほんの数十秒の会話です。
3. 得た情報を、みんなが使える言葉に変える
こちらから商品について伝えていると、少しずつスタッフからも話をしてくれるようになります。
「この言い方をしたら聞いてくれたよ」「こういうお客様が買っていったよ」「この商品について聞かれたよ」。こうした何気ない情報が返ってきます。
店長だけが商品のことを知っていても、店舗全体の力にはなりません。
自分が試す。スタッフに伝える。スタッフも試す。そこで得た反応をまた共有する。
そうやって店舗の中で情報が少しずつ循環していきます。
新商品を勉強することそのものよりも、得た情報をみんなが使える形にすることの方が重要だったのかもしれません。
新商品だけではありません。普段から置いてある、お客様にもスタッフにも馴染みのある商品についても、商品の背景や特徴を集めるようにしていました。
社内で共有されたエピソードなども含め、事実として確認できている情報の中から、お客様との会話に使いやすいものを覚えておきます。
商品のスペックを一方的に説明するのではなく、「実はこれ、こういう商品なんですよ」というちょっとした豆知識から興味を持っていただく。そんな接客を大切にしていました。
4. 小さな会話を、信頼の土台にする
スタッフとの信頼関係も、何か特別なことで作ったわけではありません。
「今日これ売れました」「この説明よかったです」「これ、お客様に聞かれました」「この商品、結構いいですよ」。そんな小さな会話の積み重ねです。
毎日の何気ないやり取りが増えると、商品以外のことも話してもらいやすくなります。
- 仕事で困っていること
- 売場で気になったこと
- お客様から言われたこと
- 店舗運営についての意見
日頃から会話があるからこそ、必要なときに話してもらえる。そうした関係を作ることが、店長として店舗を運営するうえでも重要だったと感じています。
結果として、パートスタッフから相談を受けることや、上司から店舗運営について任せてもらう場面も増えていきました。
パートスタッフや上司との間に築けた信頼関係は、自分の店長経験の中でも大きな財産です。
5. 「まず自分がやる」から始める
一方で、コミュニケーションだけを大切にしていたわけではありません。
店長になってからも意識していた仕事の一つが、トイレ掃除でした。
店舗には、誰かがやらなければならない仕事があります。その中には、誰もが積極的にやりたいとは思わない仕事もあります。
責任者になると、自分で作業するより、スタッフへ指示を出す場面が増えます。
ただ、自分がやりたくない仕事をスタッフにだけお願いしていては、「みんなで頑張ろう」と言っても説得力がありません。
トップにいる人間ほど、みんなが嫌がる仕事から逃げない。
時間があればトイレを確認する。汚れていれば自分で掃除する。誰かにお願いする前に、まず自分が動く。
こうした考え方には、松下幸之助の『道をひらく』から学んだことや、当時勤めていた会社の会長が大切にしていた価値観から影響を受けています。
商品についても同じです。
スタッフに「この商品をおすすめしてください」と言うだけではなく、まず自分が勉強する。自分が売場に立つ。自分が伝えてみる。そして、「この説明は反応が良かった」と共有する。
掃除についても、「ここをきれいにしてください」と言うだけではなく、自分で掃除する。
私が店長時代に大切にしていたことを一言で表すなら、「まず自分がやる」だったのかもしれません。
自分が動けば、その経験をもとに話せます。実際に経験しているから、スタッフに伝える言葉にも具体性が出ます。
そうした行動と小さな会話を繰り返すことで、少しずつ信頼が積み重なっていく。店長経験を通じて学んだことの一つです。
まとめ
ドラッグストアで働いていた頃を振り返ると、私の強みは単に商品を販売することではありませんでした。
情報を集め、自分で試し、相手に伝わる言葉へ変え、それを周囲へ共有することです。
- 新商品を勉強する
- 自分で売ってみる
- お客様の反応を見る
- スタッフへ伝える
- スタッフからも情報をもらう
- また次の接客に生かす
一つひとつは小さな行動です。スタッフとの会話も、数十秒程度の何気ないものだったかもしれません。
しかし、その小さな積み重ねが商品知識の共有になり、コミュニケーションになり、やがて信頼につながっていきました。
そして信頼を得るためには、言葉だけではなく自分自身が行動することも必要です。
売るなら、まず自分が売る。伝えるなら、まず自分が理解する。誰かがやらなければならない仕事なら、自分もやる。
店舗運営を経験したことで身についたこの考え方は、現在の仕事や文章を書くときにもつながっています。
相手が知りたいことを考える。情報を分かりやすい言葉に変える。そして、自分の経験をもとに伝える。
これからも大切にしていきたい、自分の強みの一つです。